毎年のように保証人と連帯保証人の違いが繰り返し話題にあがりますが、繰り返されるということはそれだけわかりにくい、誤解をされやすいということだと思います。
近年では家賃保証会社も出てきたこともあり、家賃保証会社と連帯保証人はだいたい同じなんでしょ、といわれる始末です。
ですが、家賃保証会社と保証人と連帯保証人は明確な違いがあります。
【決定版】と大々的に出していますが、将来的にも大きくは変わらないはずです。
どうか、家賃保証会社と連帯保証人を混合されないようにお願いします。
家賃保証会社とは
家賃保証会社とは、賃貸物件を借りる際に連帯保証人の代わりに入居者の家賃支払い能力を機関保証する会社です。
詳細は家賃保証会社とは何か?の方が詳しいのでご参照ください。
家賃保証会社と契約していると、家賃が遅れた際に入居者に代わって家賃保証会社から家主に対して家賃が振り込まれます。ただ、これは一時的に立て替えただけで代わりに支払っているわけではありません。
立替金ですので、その後、家賃保証会社から契約者に対して請求をします。
「家賃が遅れても家賃保証会社から請求されるのなら意味がないじゃないか!」みたいな声をたびたび聞きますが、保証契約は賃貸借契約に付随しており、賃貸借契約では家賃の支払日を明記されています。
家賃が遅れるというのは契約違反になるので、家賃が遅れてはいけません。
重要なことですが、保証契約を結んでいたとしても家賃を遅れていいわけではありません!
保証契約の締結には最初に家賃の30%~100%の初回保証料がかかり、さらに1年に1度は更新保証料がかかります。場合によっては毎月の保証料が家賃の数%かかることもあります。
要は、お金を払って「私は家賃のことで家主に迷惑をかけません」と宣言することで部屋を借りやすくしているわけです。
連帯保証人と保証人の違い
連帯保証人と保証人は非常によく似ています。連帯保証人のことを単に「保証人」とよぶこともありますのでますますわかりにくさに拍車がかかります。
ですが、明確な違いが3点あります。
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
この3点については、どこのサイトでも詳しく解説されていますが、どれだけわかりやすく書いても法律の素人にはわかりにくい分野ですよね。
私が、ばっさり斬ります!
催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、保証人に請求されたときに「先に契約者に請求して!」と言える権利です。
保証人の場合には、この抗弁権がありますので言ってかまいません。保証人よりも先に契約者に支払い義務があるのは当然です。
しかし、連帯保証人の場合には、抗弁権がありません。つまり、契約者と連絡がつくとか、支払い能力があるとかは一切関係がなく、請求されたらただちに支払わないといけないのが連帯保証人です。
この抗弁権がないというのは非常に重たくて、契約者が家賃を遅れた場合には、家賃保証会社は契約者に連絡や請求する前に連帯保証人に連絡、請求してもまったく問題ありません。
債務を「連帯保証」するとはそういうことです。
だから、気軽に連帯保証人になってはいけません!
検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、保証人に請求されたときに「契約者は払えるんだから、先にそっちから取って!」と言える権利です。
保証人の場合には抗弁権がありますから、請求されても契約者が支払える場合には保証人は支払わなくて構いません。「自分に請求する前に契約者の給料でも差し押さえたら?」と言ってよいのです。
連帯保証人の場合には抗弁権がありません。催告の抗弁権と同様に、請求されたらただちに支払わないといけません。契約者が払えるかどうか、財産があるかどうかはまったく関係が無いからです。
極端な例では、契約者はお金を持っていて毎日遊んで暮らしていても、連帯保証人は請求されたら支払わなければなりませんし、連帯保証人の財産や給料を差し押さえられることも考えられます。
※本当に極端な例です。
分別の利益
分別の利益とは、保証人が複数いる場合には支払い義務が人数で割られるということです。
たとえば、保証人が2人いて、債務が100万円の場合には保証人は50万円が支払いの上限です。50万円を支払えばそれ以上は関係ありません。
ですが、連帯保証人には分別の利益がありませんので、連帯保証人が2人いる場合であっても債務100万円の支払いは請求された連帯保証人にあります。支払い上限は100万円ですので、契約者と3人で割るのか、連帯保証人2人で割るのか、1人の連帯保証人が全部払うのかは債権者には関係がないので「とにかく支払え」と言えます。
家賃保証会社と連帯保証人の違い
家賃保証会社と連帯保証人の違いというよりも、両者はまったく別物です。
家賃保証会社は立て替え義務だけであって、連帯保証人は支払い義務があります。
この立て替え義務と支払い義務は家主にとってはどちらも同じものですが、入居者側にはわかりづらいのだと思います。
家賃が遅れた場合には家賃保証会社がするのは一時対応です。立て替えはしますが支払いはしません。そのため、解決するには契約者か連帯保証人が支払う必要があります。
対して、連帯保証人は支払いをしないといけないので解決します。
家賃保証会社と連帯保証人で異なる対応範囲
さらにいえば、家賃保証会社と連帯保証人では対応範囲が異なります。
家賃保証会社は保証契約書に書いてあることが対応範囲のすべてです。だから、場合によっては原状回復費用は保証しなかったり、保証しても全額じゃなかったりします。
一方、連帯保証人の対応範囲は契約者の対応範囲とほぼ一緒だと思ってください。家賃、原状回復費用も含め契約者が支払わないといけないものはすべて連帯保証人も支払わないといけないものです。
このあたりは、【入居者必見】連帯保証人がいるのに家賃保証会社が必要な本当の理由(外部)が詳しいです。
厳しすぎる連帯保証人と民法改正
連帯保証人の責任が重すぎない?と思った人、その通りです。
本来は契約者が支払うべきものなのに、契約者が対応しないために連帯保証人がすべて支払わないといけないのは、法律的には正しくとも感覚的にはおかしいです。
借金の場合には、100万円の連帯保証人になれば100万円と利息を支払えば終わりです。以後は連帯保証人にならなければよいのですが、賃貸借契約の場合は結構悲惨です。
家賃が5万円だとしても、1年間で60万円。5年間滞納を続けた場合には300万円です。
上述したように連帯保証人は請求されたら、ただちに支払わないといけませんので毎月遅れたら毎月、5年間滞納があったと突然言われて300万円請求されるということもありえます。


ちなみに5年を過ぎると時効です。
そんな厳しい連帯保証人なので民法改正という話があります。
保証人の規定は民法で定められています。今までは連帯保証人の支払い上限がありませんでしたが、2020年の民法改正で大きく変わります。
連帯保証人の支払い上限が家賃に対してもつけなければいけなくなるので、今までのように連帯保証人だからすべて支払え、という話がなくなります。
家主はそれが困るので家賃保証会社はどこも今がチャンスとばかり営業に乗り出しているわけです。
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