意外な事実なのですが、賃貸を扱っている不動産屋でも定期借家契約をきちんと理解している人は少ないです。
定期借家契約は平成12年(2000年)からはじまった契約形態で、名前の通り、契約期間が決まっている賃貸借契約のです。
定期借家契約をわかっている人でも変な理解をされていて家賃保証会社は不要と思われている人もいますので、特に個人家主では理解も難しいでしょう。
定期借家契約とは何か?定期借家契約でも家賃保証会社は使った方がよい理由などご紹介いたします。
定期借家契約とは
定期借家契約とは、契約期間が予め定められた賃貸借契約です。そのため、原則として最初に定めた契約期間に達した場合には退去することが前提です。
ただし、貸主と入居者の双方の合意があれば改めて契約しなおすことで、実質的な契約の更新は可能です。
また、契約を終了させるためには契約期間満了前に「再契約はしない」旨を通知しなければなりません。これをしないと契約満了時に退去させることができなくなりますので要注意です。


いつ通知するかは契約期間によって変わりますが、契約終了の6ヶ月~12ヶ月前です。
普通借家契約(一般的な賃貸借契約のこと)の場合には契約期間は2年が多いですが、2年が経っても更新することができます。
ここだけ読むと定期借家でも普通借家でも同じように思えますが、最大の違いは定期借家契約では退去することが前提という点です。
定期借家契約で契約終了を通知しなかった場合
実はこのあたりが不動産屋でもわかっていないことがあるのですが、定期借家契約を結んだとしても契約終了前の通知をしなかった場合には退去させることができません。
つまり、家主は引越し前提で考えていたのに、入居者に通知しなかったために契約を更新しなければならなくなるということがありえます。
定期借家契約で契約したのに、通知しない場合には普通借家契約とみなされる点に注意です。


建て替えとか考えていると本当に面倒なことになりますので知らないとまずいです。
定期借家契約と普通借家契約の違い
上述のように定期借家契約と普通借家契約では退去することが前提かどうかが最大の相違点です。
定期借家契約の場合には、契約期間が過ぎれば入居者は退去するという契約ですが、例外的に貸主と入居者双方の合意があれば再契約することで入居を続けることがでいます。
裏を返すと、貸主が合意しなければ入居者は引っ越さなければならないということです。
対して、普通借家契約は契約期間が過ぎても更新することができますので、入居者が引っ越すと言うまでは契約がいつまでも続きます。
どういうときに定期借家契約は使われるのか?
定期借家契約が使われることが多いのは、建物の改築や建て替えが決まっているときです。
マンションの改築や建て替えを2年くらい後にやろうと考えたときに、定期借家契約で2年の契約を結べば建て替えの時期に入居者がいなくなりますのでスムーズにできます。
しかし、普通借家契約を結んでいた場合には、入居者が引っ越すというまで契約が続きますので建て替えをしたくともできません。
もし、貸主の都合で入居者に引っ越して欲しい場合には引越し費用や新しい物件の契約費用など相応のお金を渡さなければならないので入居者が多いほど家主の負担が大きくなります。


私の知り合いに10年の定期借契約を結んでいる家主がいます。今は改築を考えていないけど、10年くらいしたらたぶん改築を考えないといけないから、というのが理由らしいです。
定期借家契約と普通借家契約の相違点一覧
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
---|---|---|
契約方法 | 書面契約必須 | 口頭での契約可能 |
契約期間満了時 | 契約終了が前提 | 契約更新可能 |
契約満了前の通知 | 通知必須 | 通知不要 |
途中契約 | 基本できない | いつでもできる |
少し誤解されやすいところですので補足いたします。
一般的に賃貸借契約は書面で交わします。契約書を用意し署名捺印をしますが、実は普通借家契約では、法律上は口頭でも可能です。ただ、書面が無いと後々面倒なことになりますので口頭で契約する人はまずいません。
契約期間は定期借家契約の場合には引っ越す前提で互いの同意があれば再契約できます。普通借家契約では更新できます。
契約満了前の通知は定期借家契約では必須です。この通知をしないと退去しろと主張できません。普通借家契約では契約満了前の「契約終了通知」は必要ありませんが、契約が終わる前に「契約更新通知」は必要です。更新通知を送らないと法定更新になってしまい、更新料が取れない可能性が出てきます。
途中契約は定期借家契約は基本的にできません。契約期間中に引っ越すのは入居者の勝手ですが、契約期間中は「契約していることが前提」なので、住んでいなくても使っていなくても家賃は払い続ける必要があります。一方、普通借家契約の場合には入居者の都合でいつでも引越し可能です。
法律上の話をすれば、途中契約について定めがありますが割愛します。特記事項があればそれが優先されるのが普通です。
定期借家契約で家賃保証会社はどこに関わる?
以上を熟読されれば定期借契約とは何かがよくわかると思いますが、ここまでを把握した上で定期借家契約には家賃保証会社が不要と判断されている家主もいます。
では、何をもって定期借家契約には家賃保証会社が不要なのか?
家賃保証会社の業務
ここでは契約後の、家主にとっての家賃保証会社の業務に限定します。営業とか審査とかは省略するという意味です。
家主にとって契約締結後の家賃保証会社の仕事は以下の通りです。
- 家賃の立て替え
- 入居者との支払い交渉
- 入居者への退去交渉
- 裁判手続き
- 強制執行手続き
定期借家契約には家賃保証会社は不要!?
家賃保証会社の業務は家賃の立て替えから入居者への交渉、退去手続きまでです。
逆を言えば、定期借家契約で家賃滞納した場合に自分で支払い交渉ができる家主は家賃保証会社が不要とも考えられます。
なぜなら定期借家契約の場合には契約期間が定まっているので、期間満了時には引っ越しますし、引っ越さなければ家賃滞納の状況に関わらず契約違反なので裁判を起こすことができます。


一般的に、裁判は家賃滞納が3ヶ月以上あった場合にしかできません。
裁判手続きそのものは慣れていればそこまで難しくありませんし、弁護士に依頼すれば家主側の手続きはありません。強制執行も弁護士や強制執行補助業者に依頼すれば家主ですることはありません。
ただし、家賃保証会社が入ることで毎月の滞納家賃を補填できますし、裁判費用・弁護士費用・強制執行費用を負担してくれる家賃保証会社も多くあります。
家賃交渉ができて、裁判費用・弁護士費用・強制執行費用を家賃保証会社の保証範囲外という前提で考えれば、ある意味では家賃保証会社は不要かもしれません。
こういう家主の意図としては、家賃保証会社を使わない=初期費用が他の物件よりも安くすむので入居率を上げられるという考えがあってのことだと思います。


上級者向けの手段ですので、定期借家契約でも家賃保証会社を使うことをお勧めします。
コメント